たとえばなし

偶像と結果論

「イケメンフィルター」が厄介な話

声優さんのお仕事が多様化している今、イケメン声優がイケメンであることは一種の武器であり商売道具だと思う。
けれど純粋に声優としてのお仕事を評価される上では、ものすごく邪魔になるものだとも思うんだけど、そこんとこどうなんでしょう。

まず第一に、物理的に格好良い男の人を見るとなんとなくなんでもできるスーパーマンみたいな印象を抱いてしまうのはなんでなんだろう。
例えば何かに特化していても「イケメンだから」と出来て当たり前のように思ったり、何かできなかったときに「イケメンなのに」って落胆したり。逆に少し難があっても「まあイケメンだし…」って目を瞑ってしまうこともあったりなかったり…。

つまるところこの「イケメンフィルター」って、その人自身を評価する上ではかなり厄介なものな気がするんですよね。

 

そもそも「イケメン声優」という言葉が多様されるようになったのはここ5年くらいで、イケメン声優ランキングなんてものがつけられるようになったのもざっと調べる限りでは一番古くて2012年。ちなみにその結果がこちら。

matome.naver.jp

まあ某2.5次元ミュージカルに出演していた俳優さんたちが、声優としても名が知られてきたあたりなのかなーと予測できるランキングである。そういう言わば業界外からの参入や、"中の人"が注目される風潮も相まって"イケメン声優"という言葉が広まったのかなあ。正直この頃は声優さんに全然詳しくなかったのでなんともなんだけど。
私が所謂”イケメン声優”と呼ばれる人を推すようになって感じたのは、「イケメンフィルター」は演技やお芝居を見て感じることにも、ファン心理にも、大きな影響を及ぼすということ。

イケメンだからこそキャッチーでファンが付きやすそうな反面、イケメンであるが故のハンディキャップもあるんじゃないかなと思うんです。

 

✦私の考えるイケメンであるが故のハンディキャップその1。
 お芝居の良し悪しもイケメンであることで済まされてしまう。

極端にいえば、お芝居が上手かろうが下手だろうが「イケメンだから」で済まされちゃうのかな、と。
そりゃ音響監督さんや同業者さんはそんなフィルターをかけて見ないかもしれない。だってプロだもの。(音楽業界では身なりや顔面に対してもわりと口出しされるけど、声優業界ってどうなんでしょう。)でも、ただ外側から見ているファンや一般層の反応は、このフィルターに大きく左右されがちなんじゃないかなあ。

つまりフィルターをかけられている側は、純粋に評価してもらうためには「イケメン」という要素を忘れさせるくらいの爪痕を残さないといけない訳で。
そのためにはなんというか、100%でいいところを常に120%でいる、途方もない努力みたいなものが必要なんだろうなと思い至ったとき、私は溜息しか出ませんでした。

ちなみに一年半梅原さんを応援してきてそのフィルターをいちばん取り払ってくれたのは、機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズのユージンの演技。
それまでの梅原さんの演じるキャラクターの印象は、やっぱりご本人の印象が強いこともあって”梅原さん演じる○○”っていう見方が多かったんだけど、ユージンはなんというか、”ユージン(CV.梅原裕一郎)”っていう印象になるスピードがダントツで早かった。
それはたぶん今まで演じてきたキャラクターたちとは違うタイプの子っていうのもあったし、どちらかといえば中音域の子だからっていうのもあるけど、それでも言葉のひとつひとつからユージンの感情が伝わってくるお芝居だったんです。このへんもそのうち記事にしたいなあ。


✦私の考えるイケメンであるが故のハンディキャップその2。
 印象が「イケメン」で終わってしまう。

私が梅原さんを応援するようになって言われるようになったこと第一位が、「あのイケメンの人?」です。
わかるよ、わかるけど!そうなんだけどそうじゃくて!って何回言ったかわからん。

イベント会場で近くの子に「本物もイケメンですか?」「本当にイケメンですよね~」と言われること数回(基本話しかけられない系オタクですこわくないよ!)、職場でイベント行ってきた~と言えば「イケメンだった?」と聞かれること十数回(途中から聞かれなくなった)。
はたまたどこが好きなの?と聞かれて声です!と答えたら「え、顔は!?」って言われたことも。もうさあ…

み ん な イ ケ メ ン 大 好 き か っ つ ー の !

わかるよ私も好き!!あとどなたか存じ上げないですけど、イベント会場で御神体拝める~とかいうのやめておもしろいから!!

このフィルターはかけている側にデメリットなんてきっとそんななくて。でもお芝居の中身まで興味を持たないとか、はたまた興味を持っていないことにも気づけなかったり。
それって声優さんを見る上で、ものすっっっごく勿体なくないですか。

イケメンだとかなんだとか、そういうのを抜きにまっさらな状態でその人をみたときどう感じるのか。それが一番大事なのなんて当たり前なんだよなあ。

 

そしてこのイケメンフィルターの一番厄介なところは、取ろうとしてもなかなか取れないし、かけていることをしばしば忘れてしまうこと。
だって物理に勝るものなんてないんだもん。目に見えるものが印象を決めるのは、ある種仕方のないことだと思う。

かく言う私も、このフィルターに錯乱させられている自覚はあります。

「イケメン」であることを差し引きしようとして逆に厳しい目で見てしまったり、やっぱり変なところで甘かったり。イケメンであるという要素はもちろん、まっさらなものを見ようとしたときに"好意"っていうのもなかなかに邪魔になるよなあって。

だからこそ、このフィルターとうまく付き合っていかなきゃいけない。

これはきっとこの先顔の良し悪しの関係ない職種の人を応援していく上で、ずっと向き合い続けなくちゃいけない問題なんだと思います。

でも何より大事なのは、イケメンだっていう理由であれ、もし誰かに興味を持ったならそこからもう一歩踏み込んでみることなのかなって。

梅原さんで言うならお芝居、声の幅、お仕事に対する姿勢、インタビューで選ぶ言葉とか、考え方とか。

いろんなところにたくさんの素敵を持っている人だと思うから、その1つ1つをきちんと掬い上げていきたい。

そんな風に考えながら、応援していきたいです。はーがんばろ。