たとえばなし

偶像を愛してたい

「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ」

王子さまは、自分のばらがありふれたばらの花だと知って悲しんだ。

自分のもっている花はこの宇宙で唯一の、特別な花だと思っていたのに、そんなことはなかったから。ありふれた、どこにでもある花のたった一輪でしかなかったから。

けれど、キツネと絆を作り、"ただのキツネ"が"たった一匹のキツネ"になったことで、自分の星に咲いていた花が、自分にとってたった一本のばらだったことに気がついた。

だって、自分が咲くのを心待ちにしていたのは、水をやったのは、ガラス瓶をかぶせ、衝立をたててやったのは、他でもないあの花だったから。

これ、オタクの推しへの心理と似てない?

 

というわけで、もう結構前になるんですけど朗読劇×オーケストラ 星の王子さまを観劇しました。

le-petit-prince.moa.tottori.jp

今回は再演となるこの公演。初演の評判は聞いていたので再演で推しさんが出ると聞いてびっくりしました。
まあ色々あって行かないつもりだったのですが、公演2週間前になってちゃっかりチケットの手配を進めてしまいました。朗読劇好きなんだもん!

 

本編は「星の王子さま」の意訳劇という感じで、原作よりも分かりやすくスッと物語に入り込むことができました。すごくキャッチーで、いい意味で星の王子さまらしくなかった。

そして何よりこの朗読劇の見どころであろう生オケ
パーカスのお兄さんがめちゃくちゃ上手くてびっくりした!もうずっとそっち見てた!すごいの!太鼓も鍵盤も上手くて!わーー!!ってなった!(語彙)
あと指揮者の方もすごく綺麗な指揮をする方で……歌伴奏のときもきちんと歌い手のことも気にしていて、当たり前といえば当たり前なんですけど、これしてくれる人意外と少ないからね!なんだかそういう意味でもほっこりしました。いい演奏だった!

途中で挟まれる挿入歌もポップス寄りの曲調で耳馴染みがよかった。あとみんな歌が上手い
王子さま役の蒼井翔太さん、ぼく役の豊永利行さんはもちろんなんだけど、いちばんびっくりしたのはばら役のほりえること堀江瞬さん
どうしても推しさんとの関係上、アイドルマスターSideMのBeit所属アイドル ピエールの印象が強かったんだけど、今回でガラリとイメージが変わりました。凛と気高いばらの女性言葉もすごく様になっていて、ほわあゎぁ……??って変な声出そうになった(観劇マナーは守りましょうね!)。

推しさんはかの有名な台詞を残しているきつね役だったわけなんだけども、これまた原作イメージと少し違う解釈の役作りだったなあ、と思っています。
個人的に、原作で出てくるキツネは俯瞰して物事を見ていて、少し小賢しい。王子さまを試すような言動をしていると思っていました。でもうめはらさんのきつねはなんだか、とても大切なことをひとつひとつ丁寧に口にするような、哀愁や憂いを内包した優しさみたいなものを感じた。
まあ私個人の解釈なので、推しさん自身がどう読み取って役作りをしたかなんて1mmも分からないんですけどね!深読み系オタクきもちわるい!

でもなんというか、本当にカンパニーと劇場の雰囲気がすごく良くて、ラストシーンは涙を堪えるのに必死でした……。行ってよかった!
ただね、立ち見のお嬢さん方、手すりに寄りかかっての観劇、休憩時間中の座り込みは如何なものかと思いますよ……。舞台上から一番よく見えるのって最後列の立ち見客だからね……。

 

さらっと感想を書いたところで冒頭の主張に戻りましょうか。もうほんと世界の名作に向かってこんなこと言ってごめんなさい、絶対いろんなところから怒られてしまう……。でもすごい、なんかすごいしっくりきちゃって我慢できないから書かせて。

 

 

推しって、オタクにとってのたった一人だ。

ありふれたただの役者やアイドル、声優が、自分にとってのたった一人になるということ。それって一体どういうことだろう。

キツネは、絆を作れば王子さまは自分にとって世界でたった一人の人になると言った。だから自分を飼い慣らしてほしい、と。そして、「飼い慣らしたことしか学べない」とも言った。

つまりそれは、絆を作ったこと……忍耐し、時間をかけ、積み重ねた対象でなければ本当の意味での理解はできないということだ。

 

「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ」

星の王子さま」(集英社文庫)  訳:池澤夏樹 著:サン テグジュペリ

 

自分が費やした時間だけが自分に答えてくれるし、出来るだけ近い温度で物事を受け取るためには、そういう時間が何よりも雄弁だ。

セカライに行って後悔した話 - たとえばなし

 

 二つ目の引用は、今年の2月に上げた「セカライに行って後悔した話」という記事の中の一文。もうこれってほぼイコールじゃん!

絆を作ることで、僕らはお互いにとってかけがえのない存在になるんだ、なんてキツネは王子さまに言ったけれど、オタクとタレントが"そう"なることはちょっとばかり難しい。オタクは唯一じゃなくて、特定多数のうちの1だから。

でも、オタクにとっての推しは唯一なんだよね。単推しだろうがDDだろうがその推しは1人しか居ないから、やっぱり唯一なんだと思う。

たまに、「歴=愛の考え方はお断り」という一文を見ることがある。好きになってから日が浅くても、すきっていう気持ちが軽いって言われたくないってことなんだと思う。それはわかる。でもやっぱり、費やした時間がなによりも雄弁だなあって思う。

オタクとタレントの関係性は、きっと時間をかけたことで出来上がるのは絆なんかじゃなくて情とか執着、感情移入と意地、そういうものだ。 だからどんどん冷静な目で対象を認識出来なくなるし、義務感が大きくなりもする。

それでたまに第三者の意見に凹んだり、怒ったり。なんでこの人を応援してるんだろう?って我に返ることなんてしばしばだし、疲弊して手放そうとだってする。もーーこの繰り返しが本当にしんどい。おなじものを好きでい続けるのってむずかしい。メンがよわい人間には向いてないよねオタク!オタクやめよ!無理だけどな!

それでも、自分が惹かれて、期待して、色んな景色を見せてくれた相手は間違いなく推しさんだから。それってきっと、王子さまがたった一本のバラを自分の中に見つけたのといっしょだ。時間をかけたぶんだけ、推しさんの変わって行く姿が分かる。

だからね、投げ出したくなっても、いまの私の中に咲く世界でたった一本のバラは推しさんなんです。

私は王子さまみたいにやさしくないからガラス瓶をかぶせたりしないし、衝立だって立てやしないけど。でも、三本のトゲを信じてるんだと思う。

 

 

そんなこんなで今年は朗読劇が多くてうれしいなあ。

ドルオタ気質なので歌物も好きですが、アイドル声優問題で胃が痛くなるので、フラットに推しさんのお芝居を見ることが出来る朗読劇が一番好きです。

秋アニメもいっぱいご出演されるようなのでいい加減色々消化します。たぶん。